~時間を有効活用?それとも“切り売り”?~
スマホから始まる「スキマ時間バイト」
ここ数年、「スポットワーク」という新しい働き方が一気に広がっています。
スマホアプリを開けば、飲食店のホール、オフィスのデータ入力、コンビニのレジ、引っ越し作業の手伝いなど、さまざまな短時間・単発の仕事がずらり。
求人は常に更新され、募集が埋まればすぐに画面から消え、代わりに新しい案件が次々と表示されます。履歴書も面接も不要。本人確認書類をアプリに登録して、仕事内容や勤務条件を確認し、応募ボタンをタップするだけで契約成立。
「隙間時間にちょっと働いて、その日のうちに収入を得る」。そんな働き方が、特に若い世代や副業を探す社会人に支持されています。
登録者は5年で8倍以上!
内閣府が発表した経済財政白書によると、スポットワーク仲介アプリの登録者数は2019年末の約330万人から、2024年秋には2800万人に急増。5年でおよそ8倍に膨れ上がりました。2025年1月にはすでに3200万人を突破しています。
特に「タイミー」などの大手アプリは、飲食や接客、運搬といった仕事が大部分を占め、求人の充足率は約8割に達しています。パートタイム全体の労働量のうち、すでに1~3%をスポットワークが占めるまでに成長しており、「無視できない規模」と専門家は指摘しています。
高齢者や主婦にも広がる
スポットワークを利用しているのは学生や若者だけではありません。
新型コロナ以降、副業解禁や収入減を背景に社会人の利用が増加。さらに60歳以上の高齢者の登録者数も、わずか1年で約2倍に。
「フルタイムは体力的に難しいけれど、週に数時間なら」というニーズにぴったり合致しているようです。実際にスポット勤務をきっかけに、企業から長期雇用のオファーを受けたケースも多く、調査では7割近い企業が「長期雇用を打診した」と回答。そのうち6割以上が実際に採用につながったといいます。
トラブルも少なくない
一方で、課題も浮き彫りになっています。労働組合の調査によれば、スポットワーカーの約47%が「トラブルを経験した」と回答。
最も多いのは「仕事内容が求人情報と違った」。次いで「十分な指導がなかった」「一方的に利用を停止された」など。安定的な収入やスキルアップにはつながりにくい、という指摘も根強いです。
ファイナンシャルプランナーの山内真由美さんは「時間を切り売りしているにすぎない。保障も不十分で、キャリア形成には結びつきにくい」と警鐘を鳴らします。ただし「消費者金融に頼るよりは建設的。副収入の“トッピング”としては有効だが、メインの収入源にはならない」とも述べています。
令和の「働き方」は定着するのか?
スポットワークは、少子高齢化による労働力不足の“穴埋め”として急速に広がりました。アプリの普及によって、雇用主とワーカーをリアルタイムで結びつける仕組みが整い、時間と場所の制約を超えた柔軟な働き方を実現しています。
一方で、保障やキャリア形成の課題は依然として大きな壁。スポットワークは果たして一時的なブームに終わるのか、それとも新しい雇用モデルとして定着するのか――。
「ちょっと働きたい」と思ったときにすぐに仕事が見つかる便利さは、多くの人にとって魅力的です。これからの日本社会で、スポットワークがどのように進化していくのか注目されます。
まとめ
- スポットワークはスマホ一つで応募可能な短時間・単発の仕事
- 登録者は5年で8倍、3200万人を突破
- 飲食店などではスポットワーカー中心で店舗運営する事例も
- 高齢者や主婦、副業希望の社会人にも利用が広がる
- 仕事内容の相違などトラブルも多く、安定雇用やスキルアップには課題あり
- 「副収入のトッピング」には便利だが「メインディッシュ」にはなりにくい
スポットワークは、令和時代を象徴する新しい働き方のひとつ。
その便利さと危うさを理解した上で、自分のライフスタイルに合わせてうまく活用することが、これからの賢い働き方になりそうです。